経営力向上計画の策定にはローカルベンチマークを活用しよう

今年7月、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」が「中小企業等経営強化法」と改められ、「経営力向上計画」が法的に位置づけられました。

では「経営力」とは一体何でしょうか?

法律の条文によると、『「経営力向上」とは、事業者が、事業活動に有用な知識又は技能を有する人材の育成、財務内容の分析の結果の活用、商品又は役務の需要の動向に関する情報の活用、経営能率の向上のための情報システムの構築その他の経営資源を高度に利用する方法を導入して事業活動を行うことにより、経営能力を強化し、経営の向上を図ることをいう。』とあります。

平たく言うと、「事業を取り巻く環境や自社の経営資源をきちんと把握した上で、生産性を向上して収益を伸ばしていく力」と言えそうです。

そこで、「経営力向上計画」は、企業が上記の力を伸ばしていくための取組みを国が支援しますという位置付けになっています。業種ごとに国が定めた指針が公表されており、管理していくべき財務面の指標も例示するなど、ずいぶんと懇切丁寧な、悪く言えば大きなお世話と紙一重とも言えるような指針となっています。

そして、この指針に関連して新たに登場したのがローカルベンチマークというものです。「ロカベン」と略されるようです(以下ロカベンと称します)。経営力向上計画の中身では、自社の現在の経営状況を説明することが求められるのですが、その説明にこのロカベンを使うことが推奨されているのです。

ロカベンとは、簡単に言うと、中小企業と金融機関の対話のためのツールと位置付けられており、財務情報だけでなく非財務情報も用いて企業を評価していこうとするものです。財務情報では「売上増加率」「営業利益率」「労働生産性」「EBITDA有利子負債倍率」「営業運転資本回転期間」「自己資本比率」の6つの指標、非財務情報では「経営者」「事業」「企業を取り巻く環境や関係者」「内部管理体制」の4つの視点で企業の定性的な情報を把握しようとしています。各指標についての説明は別の機会に譲りますが、ベースにある考えとしては、本業による収益力や安全性、生産性を重視しようという意図が感じられます。

これまでも中小企業の評価ツール等は様々ありましたが、なぜ再び国はわざわざこのようなものを用意したのでしょうか?
この背景には、「事業性評価」という概念があります。これは、金融機関が担保や個人保証に頼らず、生産性向上に努める企業に対して成長資金を供給するように促そうとするものです。

中小企業、特に小規模企業に対する融資判断では、財務情報をベースに保証協会の保証に基づいて実行されることが多く、企業に対する金融機関の目利き力が低下しているのではないかという国の問題意識があります。また、金融機関が保証協会の保証付き融資に頼ってきた結果、企業側の視点では長期借入金が増加し、返済負担でキャッシュフローがマイナスとなってしまって財務状況が一向に改善しない企業も増えているという弊害も意識されています。

上記のような状況の解決策として、金融機関はもっと企業の事業性そのものを評価して、頑張る企業に資金を供給していくよう国の方針が転換しつつあります。そのために、金融庁は金融機関に対して「金融仲介機能のベンチマーク」というものも整備しました。ベンチマーク項目の中には、「金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合」という指標が定められています。つまり、金融機関は事業性評価に基づく融資金額や融資先を増やすインセンティブを持つことになったわけです。

こうした背景を考えると、企業としては、例えばロカベンを用いて自社の状況を説明することにより、金融機関に自社の事業性を評価してもらうきっかけにすることができそうです。別な言い方をすれば、担保や保証が無くても融資を受けられる可能性が期待できるといえるかもしれません。もちろん、ロカベンは簡易な分析ツールなので、コトはそう単純ではありませんが、少なくとも交渉のテーブルに着くことはできる可能性はあります。繰り返しになりますが、金融機関との対話のきっかけになるということです。

金融機関としてもロカベンをどのように活用していくかは、まだ手探りの状況と思われます。本気で事業性評価をしようと思えばロカベンでは情報が足りないですし、もともと独自の事業分析手法を持っている金融機関もあるからです。また、仮に自社の融資先をロカベンを使って評価していこうとすれば、それなりの労力もかかります。我々のような外部専門家を活用して自行の融資先にロカベンを実施させるという選択肢もあると思いますが、その費用負担はどこがするのかという問題もあります。

このような状況を鑑みて、では中小企業としてはどうすべきかという話ですが、まずは自社の経営状況や今後の方針を第三者に対して根拠を踏まえて説明できるようになることを目指すと良いと思います。これができるためには、経営に関する数字を見る力も必要ですし、自社の経営資源をちゃんと把握する力が必要だからです。ロカベンは、あくまでもそのためのツールであると理解しましょう。

人に説明するためには、経営計画等の形でまとめておくのが一番です。経営力向上計画では、国の認定を受けると固定資産税を3年間半減するというメリットがあります(ささやかなメリットではありますが)ので、これと併せてロカベンを実施し、その結果は経営力向上計画の中にも使いつつ、計画実施のために必要な資金の借入の際に金融機関に提出して、自社への理解を深めてもらうきっかけにするというような活用をするのが良さそうです。