新たな事業承継施策「経営資源引継ぎ補助金」がまもなく公募開始予定

「事業承継」が国の中小企業政策において重視される流れが出てきてから久しいですが、今年は新たな政策が導入されることになりました。新型コロナウイルスの影響等により、中小企業・小規模事業者においても今後事業の統廃合が進むと考えられており、M&A等の第三者承継を補助する仕組みとして、新たに「経営資源引継ぎ補助金」が創設されます。すでに5月21日付で事務局も決定(ちなみに昨今話題の協議会ではありません)しているため、間もなく公募開始になるものと思われます。

もともと、中小・小規模事業者の事業の承継に関しては「約127万者が後継者未定」という状況への問題意識から、国はこれまでも事業引継ぎ支援センターの設置や事業承継補助金等の政策を導入し、経営者の気づき誘発やマッチング、事業承継に伴う経営革新の取り組み等を支援してきました。

ただ、今までの支援施策の中で空白地帯になっていた部分として、M&A等の第三者承継に伴って必要となる専門家報酬があります。M&A等の第三者承継では、相手先候補の探索をはじめ事業デューデリジェンス、企業概要書の作成等を専門家に依頼することが多いですが、これらの作業にはそれなりの工数もかかるため、専門家報酬も多額になりがちです。特に後継者のいない小規模事業者では、第三者に事業を売却したくても、専門家に支払う報酬が阻害要因となっている可能性があります。

そこで、その専門家報酬そのものを補助しようという試みが「経営資源引継ぎ補助金」です。この補助金の概要は、中小企業庁の事前資料によると以下の通りです。(公募開始後に発表される公募要領では変更になる可能性あり)

補助対象 補助対象経費 補助率 補助上限額
買い手 謝金、旅費、外注費、委託費 2/3 200万円
売り手

謝金、旅費、外注費、委託費

(廃業費用)廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費

2/3

650万円

※廃業費用を活用しない場合は200万円

 

いつからいつまでの間の承継手続きが対象になるのか等、詳細は公募要領を待つ必要があります。また、採択基準の考え方として以下のことが記されていることから、一定程度の規模で地域経済にとって影響力がある事業者が対象となることが想定されます(補助予定件数は900件となっています)。

  • 地域の需要及び雇用の維持や、地域の新たな需要の創造及び雇用の創出を図り、我が国経済を活性化させる事業再編・事業統合を促進
  • 事業の独創性、収益性、継続性等及び当該事業者の状況を勘案し、政策的に支援する必要が認められるものに限る

なにぶん初めての制度でもあり、具体的な採択基準や採択率等はまだ不明ですが、第三者承継を予定している、あるいは最近実施した事業者の方は、本補助金の活用を検討されてはいかがでしょうか。