中企庁のM&A支援機関登録制度実績報告資料が興味深い
中小企業庁が所管するM&A支援機関登録制度の登録機関は毎年実績等の報告が求められていますが、今年も事務局から連絡がありましたので早速報告しました。引き続き弊社はM&A支援機関登録制度の登録機関として活動いたします。
さて、事務局からの案内資料の中に、今年3月に行われた「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会(第8回)」の資料がありましたが、これ結構面白いですね。登録機関の活動状況やM&Aにおける取引相場感等の情報が分析されており、中でもPBRを使って譲渡価格の水準分布を分析されたものが興味深かったです。
PBRとは株価純資産倍率のことで、今回の分析では登録機関から報告された情報に基づいて、株式譲渡価額÷純資産で計算されています。平たく言うと、純資産の何倍の株価で取引が成立したかという分析であり、第三者への事業承継を検討する事業者様においても相場観を把握する一助になると思います。
結論としては、PBRの中央値は1.4倍となっており、全体の75%は2.8倍以内の範囲に収まっているという結果となっています。ちなみに純資産は、支援機関によってデューデリジェンスを実施して実態純資産を報告しているケースと、決算書記載どおりの額を報告しているケースが混在しているようですので、その点は考慮する必要がありますが、実務家である私としても概ね納得感のある水準だなぁという感想を持ちました。
中小M&Aの現場では、実態純資産+営業利益×●年分という計算式で簡易査定することも多いですが、資産超過で普通に利益が出ている事業者であれば、やはり上記の範囲内の価格水準で決着することが多いと思います。
業種別の分析もされていて、多くの業種は中央値が1.3倍前後なのに対して、情報通信業だけは中央値がなんと2.9倍で最大値は7.8倍と異彩を放っています。成長期待の分が上乗せされることが多いのですかね。これもなかなか興味深いデータでした。
その他にも、色々と興味深いデータが掲載されているので、関心のある事業者の方はぜひご一読されてみてください。
M&A支援機関登録制度実績報告等について(中小企業庁 財務課):
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/008/001.pdf
中小企業庁は、事業の承継を考える事業者のために中小M&A市場の透明化を図ろうという意図で支援機関の登録制度を作ったと理解していますが、今回の分析のような情報が共有されることは確かに意義深いと思います。