東商セミナー『小規模事業者のための「クラウド経営」の勧め』を終えて

1月15日、東京商工会議所世田谷支部にて「クラウド経営の勧め」というセミナーで講師を務めさせていただきました。小規模事業者も積極的にクラウドサービスを経営に活用して、売上増加や生産性向上を実現しようというテーマです。

このセミナー企画の背景には、マーケティング分野にしてもバックオフィス系の分野にしても、昨今のクラウドサービスの充実ぶりには目を見張るものがあり、利用料金面でも小規模事業者にとって十分利用価値があるツールが揃ってきているという環境があります。

ただ、サービスも様々ですし、ツール自体に振り回されてしまっては元も子もありません。クラウドサービスに限らずIT導入の基本になりますが、大事なことは、目的を明確化し、それに必要な機能を選択することです。

今回のセミナーでは、どの事業者でも活用の機会がありそうなWebマーケティング系のツールや会計ツールについてデモ等も踏まえてご紹介させていただきましたが、ツール紹介はあくまで活用イメージを持ってもらうためのオマケであり、お伝えしたかったのは考え方の部分です。

こと「経営」の状況に関しては、決算に伴って数字で見える化されますが、決算で可視化される数字はKGI(Key Goal Indicator)というべきものです。そのKGIを達成するために様々なKPI(Key Performance Indicator)があるわけですが、これを見える化して意思決定に役立てることをクラウドツール活用の第一歩にされてはどうかというのが今回のセミナーで提案したかったことでした。

例えば、KGIである売上高は客数×単価に分解でき、さらに客数は新規客とリピート客に分解できます。1人の新規客を得るためには、商談中のお客が一定数いる必要があり、さらには商談につながりそうなお客も確保している必要があります。仮に見込み客から商談に進むお客の割合が10%で、商談の成約率が20%だとすれば、10人の新規客を得るためには商談客が50人、商談につながりそうな見込み客が500人必要だと判断することができます。それでは見込み客を500人集めるにはどうしたら良いかと対策を具体的に考えることができるのです。

また、クラウドサービスを活用するには、投資対効果の判断も重要です。経理等のバックオフィス系の業務では、業務効率化を狙ってクラウド会計ツール等を導入するケースも多いと思いますが、安易に導入するのではなく、得られる効果と支払う費用のバランスを具体的に検討しましょう。得られる効果を判断するには、まずは業務の見える化が第一歩です。誰が、何の目的で、いつ、どんな行動を、どの程度の時間を使って行なっているのかが分からなければ、何を改善すれば効率化するのか見当を付けることはできないからです。

このように、クラウドサービスを活用して経営を見える化することはもちろん、その導入にあたって自分たちの仕事のやり方を棚卸してみるという意味での見える化という効果も、無視できないメリットと言えそうです。