キャッシュレス消費者還元事業が始まります
昨今、新聞等で「中小企業のキャッシュレス化対策」というテーマの記事を見かけることが多くなりましたが、これは今年10月1日に予定されている消費税率引き上げに伴う需要平準化対策として実施される「キャッシュレス消費者還元事業」という国の政策が背景にあります。
内容は、10月1日の消費税率引き上げ後9か月間、消費者がキャッシュレス決済手段を用いて中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店等で支払を行った場合、フランチャイズ店以外の個店では5%、フランチャイズ加盟店では2%が消費者に還元されるというものです。
決済事業者に対して、国から「手数料を3.25%以下にしろ」だの「決済端末代金の1/3を負担しろ」だの、普通に考えるとありえないような要求をして実現することとなった政策です。そうまでして国が中小企業者のキャッシュレス化を進めたい理由は色々とあるのですが、ここではそれは置いといて、中小事業者である個店の立場で考えてみます。
まず制度上の直接的なメリットとしては以下の2点です。
- クレジットカード等の読取りに必要な端末等の料金が無料になる
- 個店が負担する決済手数料は実質的に2.17%以下になる(※)
※決済事業者は契約する個店に対する加盟店手数料を10月1日から9か月の間は必ず3.25%以下にしなければならず、加えて手数料の1/3が国から補助されるため。
この他に、キャッシュレス対応することで事業面でのメリットも想定されます。
例えば、
- キャッシュレス対応することで、販売機会が増える可能性がある。
- 生産性向上対策になりうる(レジ締めを始め、現⾦を取り扱うことによる作業時間は1日あたり30分~1時間程度とも言われており、この削減が見込めるため)
- 現金では発生しがちな売上金の紛失や盗難等のトラブルが減少する
等です。
一方で、デメリットというか課題としては、
- 9か月経ったら決済手数料は上がってしまう
- 支払手段が多様化すると販売現場の対応が煩雑になる
といったことが考えられます。
このうち、事業終了後の決済手数料に関しては、この事業に参画する決済事業者は事業終了後の手数料をいくらにするのかを事前に公表しなければならないため、個店側が判断するための材料はあらかじめ示されることになります。
販売現場の対応については、スタッフへの教育訓練をしっかり行うことが求められますが、特に飲食料品を扱っている小売店等では軽減税率への対応もあるため、いずれにしろ販売スタッフにはしっかりと教育訓練を行っておく必要がありそうです。
上記を踏まえ、小規模な個店はどのように対応すべきでしょうか?
一つの考え方として、キャッシュレス化だけで考えるのではなく、これを機会にデータ活用経営への一歩を踏み出すことをお勧めしたいです。
例えば、これを機会にクラウド型のPOSレジ等を一緒に導入することで、売上の単品管理等を行い、売れ筋や死に筋を分析して販売効率の向上を目指すといったアプローチです。
日本では少子高齢化社会の進展が確実であり、消費の先行きは決して楽観できるものではありません。事業環境が厳しくなる中、データに基づいて販売力の向上やロス率の低減を図り収益性を高めていくことは、小規模事業者にとっても重要な取り組みと考えられます。
クラウド型のPOSレジ自体は、キャッシュレス消費者還元事業で何らかの補助が受けられるものではありませんが、飲食料品の販売を行っている事業者であれば「軽減税率対策補助金」を活用して導入する手があります。軽減税率対策補助金では、レジとして使うiPad等の汎用端末も補助対象になるため、かなりお得な補助金となっています。
キャッシュレス消費者還元事業にしろ軽減税率対策補助金にしろ、国が大盤振る舞いで小規模事業者の経営力を高めるツールの導入を後押ししてくれていることに変わりはありません。経営力を高めるチャンスと捉えて積極的に活用することを考えてみてはいかがでしょうか?