20年度第3次補正予算案の目玉「事業再構築補助金」等について
通常国会が1月18日に召集され、1月中には20年度第3次補正予算案が成立する見通しとなっていますが、この3次補正の目玉と言われているのが中⼩企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)です。予算規模が約1兆円となっており、通常枠でも補助額上限が6千万円(補助率2/3)、特別枠では最大1億円(補助率2/3)という大型の補助金となっています。
菅政権になって、中小企業再編論の勢いが増してきている印象をお持ちの事業者の方も多いと思いますが、この補助金はまさに政権の考えが滲み出ている補助金と言えます。
例えば、「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す」企業が対象と明文化されていますが、ここでのポイントは、個人的には「規模拡大を目指す」にあると考えています。政権内で、日本の中小・小規模事業者の生産性が諸外国と比べて低いのは小規模事業者が多いからだという意見があり、この補助金はそれを反映した政策であると考えられるためです。
昨年末に公開された概要チラシによると、付加価値額の一定以上の増加が見込まれる計画であることというシンプルな書きぶり(下記の3を参照)になっていますが、実際の公募要領では、もしかしたら規模拡大の象徴として従業員数の増加等も要件に入ってくる可能性も考えられます。
<事前チラシで示されている対象要件>
- 申請前の直近6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
- 事業計画を認定支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
1と2で説明されている売上高減少要件と認定支援機関(金融機関含む)の関与要件の2点もポイントになりそうです。売上高減少要件については、公募はおそらく2月~3月が予想されることから、その時点で応募する企業は、昨年の9月以降くらいの任意の3か月間の売上高合計が、その前年の同じ3ヶ月間の売上高比で10%以上減少している必要があります。セーフティネット保証では、店舗増加等の理由で昨対比で売上比較することが適当ではない事業者向けの緩和要件がありますが、この補助金ではどうなるのか今のところ不明です。
認定支援機関の関与要件については、以前のものづくり補助金等で取り入れられていた方式が採用されるのではないかと予想しています。ものづくり補助金の申請には、2年ほど前までは認定支援機関確認書という書類が必要でした。今回も、認定支援機関からの何らかのエビデンス書類が必要という形になると推測しています。
中小企業の再編を意図する政策はこれだけではありません。「事業承継・引継ぎ補助⾦」もそれに該当します。これは、「事業承継・引継ぎを契機とする業態転換や多⾓化を含む新たな取組や廃業に係る費⽤、事業引継ぎ時の⼠業専⾨家の活⽤費⽤等を⽀援」するという位置付けとなっています。もちろん中小企業に多い引継ぎ形態である親族内承継も対象になっていますが、「他社の経営資源を引き継いで創業」とか「M&A」も対象としており、M&A型では最大1,000万円(廃業を伴う場合)までの補助があります。また、M&A等の際に発生する専門家の手数料も補助対象とするなど、踏み込んだ設計になっています。
経験上、特に新しい補助金は初回公募で申請した方が採択率が高いという傾向がありますので、上記の要件に該当する方は早めに準備しておくことをお勧めします。
当社は平成26年4月から認定支援機関として活動しており、補助金申請実績も豊富ですので、金融機関との関係が薄い事業者の方や、身近な認定支援機関が思い浮かばない事業者の方はご相談ください。