中小企業新事業進出補助金の公募開始

令和7年度の新たな補助金制度となる中小企業新事業進出補助金の公募が始まりました。
公募期間は4月22日から7月10日までで、採択発表は10月頃となっています。
事業期間は採択発表日から16か月以内となっていますので、概ね2027年2月頃までに事業完了できる計画であることが条件になります。
補助金額は、従業員数20人以下の場合で最大3,000万円、101人以上では最大9,000万円という大型の補助金になっています。

この補助金は、事業再構築補助金の後継補助金とも言われており、建物費が対象になることが大きな特徴ですが、公募要領をざっと読むと、事業再構築補助金の際に指摘された様々な問題点の改善を図ろうとする意図が読み取れます。
例えば、再構築補助金の時に見られた類似計画の集中申請に対しては、大幅減点するとされています。当時はグランピング施設とかエステサロン等で類似の計画が大量に申請されたことを受けての対応と思われます。

また、事業計画の作成自体をコンサル会社に丸投げするようなケースにも厳しい姿勢で臨む旨が記載されています。
したがって、事業計画は申請者自身が主体となって策定することが重要です(これは当たり前と言えば当たり前のことなのですが・・・)。

とはいえ、新事業進出要件や付加価値要件といった要件を満たす計画を策定するためには、市場分析や数値計画の整合性など、事業者自身では難しいこともあり得ると思いますので、そのような場合は認定支援機関等のサポートを受けながら計画を策定しましょう。
禁止されているのは、申請代行を行うコンサル会社等が補助金の採択だけを目的として、事業者自身が考えていないような内容を勝手に作り上げて申請するケース等です。
ご自身で構想する計画のブラッシュアップのための助言を受けたり、自分では難しい市場調査等を手伝ってもらうこと自体は問題ありません。

また、ものづくり補助金や省力化投資補助金等と比べた時の大きな変化としては、「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表」が申請要件に位置付けられたことです。これまでは比較的規模の大きな事業者に限って申請要件とされていましたが、今回は全事業者に義務付けられました。

補助金額に関しては、補助率は2分の1で補助金額の下限額(750万円)も設定されていることから、投資額は1,500万円以上であることが求められますので、それなりの体力がある事業者が行う新市場進出を念頭に置いている印象を受けます。

補助金額の下限設定に関連して、今回のような補助金の申請では、応募した事業計画の「採択」と「交付決定」という2つのプロセスに注意する必要があります。
採択というのは、応募申請した事業計画の内容自体を評価するものであり、この時点では申請した補助対象経費の精査は行われません。
費用の精査は、採択された事業者が別途行う交付申請の手続きの中で行われます。申請した経費が本当に補助対象として認められるか否かは、この交付申請手続きを経て決まります。
つまり、計画内容自体は採択されていても、対象費用として申請した金額については交付申請の段階でNGを食らうリスクがあるということです。

中小企業新事業進出補助金では、補助金額の下限が750万円と決められているため、特に投資計画が1,500万円といったギリギリの金額で申請しているケースでは、申請した経費の一部でも対象外と認定されてしまうと、補助金額が750万円を下回ることが確定するため、せっかく採択されていても、その時点で採択取り消しになってしまいます。
例えば、1,500万円のうち50万円分の費用が対象外と認定されてしまうと、補助対象金額が1,450万円になり、補助率2分の1を掛けると725万円になるため下限の750万円を下回るといったケースが想定されます。

このような事態を避けるには、応募申請の段階で公募要領に定められた「補助対象経費」を熟読するのはもちろんのこと、実際の見積書も取得した上でしっかりとした計画を策定することが重要です。

今回の補助金は、新たな事業への前向きな挑戦を後押しするものであり、中小企業の規模拡大や付加価値向上を通じた生産性向上を図ることによって、賃上げにつなげていくことが目的になっています。「新事業に進出して、雇用拡大など地域の経済に貢献したい」「新事業に挑戦したいけど、費用面で課題がある」といった事業者には最適な補助金となっていますので、我こそはという事業者の方は、ぜひ応募をご検討ください。

中小企業新事業進出補助金のウェブサイト